もうひとつの万物理論

重力は張力の反作用であるという事実から宇宙の仕組みを考える

7 引き伸ばされ続ける物質

 

7-1:はじめに

 少し前までの定説では、物質の素となる原子は、正の電荷を帯びている陽子、電荷を帯びていない中性子、負の電荷を帯びている電子という僅か3種類の素粒子から構成され、ほぼ同数の陽子と中性子から成る原子核と、その陽子と同数の電子が、その周りを一定の間隔を置いて周回していると考えられていました。

 現在では、それまで素粒子とされていた陽子と中性子は更に細分化されていると考えられ、それは、原理を突き詰めるほどシンプルになってゆくはずの事の道理に反していますが、とりもなおさず原子の構図そのものに変わりはありません。

 そして、その構図が天体と酷似しているのは単なる偶然ではないでしょう。なぜなら、素粒子から巨大な天体に至るまで、この膨張する宇宙空間に存在する限り、全ての物質が同じシステムの中に置かれることになるからです。 

 また、私たちは、ここに存在するものが全てであり、ここに働いているルールが絶対であると考えてしまい勝ちですが、それは、この地球の表面付近という極めて限定的な状況下における、条件付きかつ一時的な結果でしかないということを理解しておかなければなりません。

 素粒子も「それ以上分解することができない、全ての物質の素となる粒子」という人間が創り出した概念であって、物質を構成する要素が粒子(球体)であるならば、その原型は流動体であるか、流動体のような柔軟性を持った物質である可能性が非常に高いと考えていいと思います。

 そして物質を構成する粒子が流動体であるならば、私たちが知るその容積(大きさ)は、粒子自体の結束力と、地球の表面付近における張力と圧力によって自ずと決っているのであって、環境によって変化すると考えるのが自然でしょう。

 何にせよ、物質の殆どの部分を占めている要素は陽子と中性子であることに異論は無いでしょうから、その実体の解明が物質を知る鍵となりそうです。

 これまでは、身の周りの事実からマクロ方向へ展開し、この世界の仕組みと成り立ちを思索してきましたが、今後は、同じ仕組みに基づいて逆方向へ展開し、目に見えない物質の実態に迫ろうと思います。

 なお、ここでは物質を構成する粒子の密度は100%であると仮定して、「絶対的な容積ではなく、単に密度や容積で表すこととします。


7-2:全ての物質は、分裂する過程にある

 この宇宙が、全ての物質の要素を包括する膨大な「その塊」が破裂することによって始まったとするならば、その破裂する瞬間の張力なりの(その張力なりにまとまっていることができる)容積まで引き裂かれて飛び散った無数の塊は、その空間が膨張し続ける限り、その膨張が進むにつれて強まる張力によって更に分裂を繰り返し、細分化されてゆくものと考えられます。

 例えば、最初の破裂によって飛び散ったその塊は、破裂の衝撃によって自転していた(静止している方が希でしょう)。その塊は、宇宙空間の膨張が進むにつれて強まる張力に耐えられなくなった時、自転しながら激しく引き伸ばされた。その結果として渦巻き銀河が形成され、その引き伸ばされた物質の一つが恒星である。恒星が、更に強まってゆく張力によって自転しながら緩やかに引き伸ばされることによって次々と惑星を分離し、その惑星も衛星を分離した。惑星自体を構成する物質も、それまで受けていた強大な圧力から解放され、更に分裂することによって様々な物質となっていった。

 そのように考えることができるのではないでしょうか。 

 そして、今後も宇宙空間の膨張が進む限り張力は徐々に強まり続け、物質は更に引き伸ばされ続けることになるでしょう。

 この宇宙空間に存在する全ての物質は、例えば太陽のような巨大な物質の塊も、水素を構成する陽子や電子も、その大小に関係なく分裂してゆく過程にあると言えます。


7-3:地球という物質の由来と行方

 この地球が、宇宙の始まりから何度かの破裂や分裂を経て現在のようになったとすれば、地球そのものを構成する物質や、私たちが存在する地表付近に存在する全ての物質は、これまで何度となく分裂を繰り返した結果として、現在の状態で存在していると考えられます。

 例えば、この地球自体は、天の川銀河が破裂する以前の巨大な塊に属していたとき、あるいは、その破裂によって誕生した太陽に属していたとき、その時々の膨大な容積なりの重力によって生じる人知を超えた圧力を常に受けてきたことになります。

 そして、地球が太陽から分裂した時点で、有史以来最も少ない容積となったことによって、重力と、それに伴う圧力は一気に低下します。

 それでも、その中心付近は依然として高い圧力が掛かるものの、地表付近では、低い圧力と、強い張力が働く状況となります。

 つまり、この地球の表面付近に存在する物質は、有史以来最も強く引き伸ばそうとされ、それでも引き伸ばされずに残ったものであると言えます。

 そして、この宇宙空間が膨張し続ければ、張力と重力、そしてそれに伴う圧力は強まり続け、この地球自体も激しく圧し潰されることによって再び完全な流動体に戻り、分裂を繰り返してゆくのでしょう。

 そのようにして、現在は固体として存在する物質も最終的には流動体となり、極限まで分裂することになると考えられます。


7-4:陽子について

 この地球上に存在する中で、最も細分化された「軽い」物質は、水素です。

 したがって、水素は、地球という気体を含めた物質の集まり中でも、最も外側の層に位置することになります。

 もはやそこは宇宙空間であり、地球の重力による圧力は殆ど掛かっていない場所と言えます。

 水素が、その状況下でも、地球の表面付近で観測される状態を保っているとすれば、それは、この宇宙空間全体を通しても、現状において最も細分化された物質であると考えていいと思います。

 そして、その原子核である陽子は、これまで極限まで引き伸ばされた結果として残った物質と言えるでしょう。

 したがって、陽子は、とてつもなく高い結束力を持ち、その密度も相まって、その容積の限界を遥かに超えた張力によって引き伸ばそうとされても引き伸ばされず、それ故に、その容積に見合わない強さの重力が働いていると考えられます。

 更に、その重力に伴う強い圧力によって、高いエネルギーが蓄えられることにもなるでしょう。

 今後この宇宙空間の膨張が更に進めば、その張力と陽子の結束力との優劣によって、陽子そのものが更に分裂してゆくか、徐々に強まる重力に圧し潰されることによって、更にエネルギーを蓄えてゆくかの何れかの過程を経て、最終的には極限まで引き伸ばされるものと考えられます。